鋸屋根:工場に適した屋根形式
鋸屋根とは、その名の通り、のこぎりの歯のような形をした屋根です。屋根の傾斜が片側に連続して並び、まるでのこぎりの刃のように見えることからこの名前が付けられました。のこぎりの歯のようにギザギザとした形は、デザイン性だけでなく、機能性も兼ね備えています。
まず、光を取り入れるのに優れています。高い方の屋根面は、ほぼ垂直に切り立っています。これは北向きに設置されることが多く、直射日光が入りにくい北側からの安定した光を多く取り込むことができます。低い方の屋根面は、南向きに設置されることが多く、太陽の光を十分に受けられます。このように、鋸屋根は上下に傾斜の異なる屋根面を組み合わせることで、自然光を効率的に採り入れることができるのです。
次に、換気がしやすい構造です。高い方の屋根面に窓を設けることで、空気の通り道ができます。温かい空気は上昇するので、高い位置にある窓から自然と外に流れ出し、換気を促します。工場など、機械の熱や人の熱気などで室温が上がりやすい建物にとって、これは大きな利点です。
鋸屋根の歴史は古く、イギリスで動力織機が登場した産業革命の時代にまで遡ります。当時の工場では、多くの労働者が作業しており、十分な明るさを確保することが課題でした。そこで、自然光を効率的に取り入れられる鋸屋根が採用されるようになったのです。現代でも、工場や倉庫、体育館など、広い空間を必要とする建物で見ることができます。近年では、住宅にも取り入れられるなど、その独特の形と機能性が見直されています。