絵図板

記事数:(1)

設計

大工の知恵、絵図板の世界

絵図板とは、建築現場で大工さんが使う、設計図を板に書き写したものです。 一枚一枚の板に、家の構造全体を描き出すので、大工さんにとっての設計図とも言えます。今は、計算機で設計図を作るのが普通ですが、昔は大工さんが自ら墨付けをするために、この絵図板がなくてはなりませんでした。 一枚の絵図板には、家の土台となる部分の配置を示す土台伏せ図、各階の床の配置を示す平面図、柱と梁の組み立て方を示す腰組み図、屋根の骨組みを示す小屋伏せ図など、家の主要な構造図がすべて書き込まれています。これを見るだけで、家の骨組みがすぐに分かるようになっています。まるで家の設計図を一枚の板に凝縮した、いわば家の設計図のエッセンスと言えるでしょう。 絵図板には、寸法だけでなく、材料の種類や加工方法、組み立て方などの細かい指示も書き込まれています。例えば、「この柱は特別な木材を使う」とか「この梁は特殊な方法で加工する」といった指示です。これにより、大工さんは設計者の意図を正確に理解し、施工を進めることができます。 また、大工さんによっては、自分独自の記号やメモ書きを書き加えることもあります。これは、長年の経験と知識に基づいた、大工さん独自の工夫や注意点などを書き記したものです。いわば、大工さんの知恵の結晶であり、技術と伝統を伝える貴重な記録と言えるでしょう。 このように、絵図板は単なる設計図ではなく、大工さんの技術や知識、そして家づくりの伝統が詰まった貴重な資料です。現代では、計算機による設計が主流となり、絵図板を使うことは少なくなりましたが、昔ながらの建築技術を理解する上で、絵図板は欠かせない存在です。また、絵図板には、大工さんの技術やこだわりが込められており、家づくりの歴史を物語る貴重な遺産とも言えるでしょう。