海藻

記事数:(1)

建材

日本の家造りの知恵:角叉

家の壁を塗る作業では、昔から様々な材料が使われてきました。中でも、海藻から作られる「角叉(つのまた)」と呼ばれる糊は、古くから土壁作りに欠かせない材料として活躍しています。角叉は、紅藻類の海藻を煮出して乾燥させたもので、水に浸すと粘り気を持ちます。この粘り気が、土壁を作る上で重要な役割を果たすのです。 壁塗りの作業では、土と水を混ぜて練り上げたものを壁に塗っていきます。しかし、土だけでは粒子がバラバラで、塗ったものがしっかりと壁に定着しません。そこで、角叉の出番です。角叉を水に溶かして土に混ぜ込むことで、土の粒子がしっかりと結びつき、粘り気が出てきます。これは、料理で例えると、小麦粉などの粉類を繋ぐために水溶き片栗粉を使うのと同じような働きです。水溶き片栗粉がとろみをつけるように、角叉は土に粘り気を与え、壁を丈夫にするのです。 角叉を使うことで、塗られた土は壁にしっかりとくっつき、乾燥した後もひび割れにくくなります。また、角叉には適度な保湿性もあるため、壁の乾燥を防ぎ、快適な室内環境を保つ効果も期待できます。 このように、角叉は日本の伝統的な建築技術において、なくてはならない存在です。自然由来の材料であるため、環境にも優しく、人にも安心安全です。現代では、化学合成された接着剤なども使われていますが、角叉を使った土壁は、独特の風合いと温かみを持ち、今もなお多くの人々に愛されています。角叉は、日本の家屋を支える、縁の下の力持ちと言えるでしょう。