家造りとリフォームにおける「逃げ」の重要性
家づくりや模様替えを行う際、「逃げ」という言葉は、材料の寸法や部品の組み合わせに設けるゆとりのことを指します。一見すると、不要な空間のように思えるこの「逃げ」は、実は建物の丈夫さや見た目の美しさを保つ上で、とても大切な役割を担っています。 家の骨組みとなる木材は、時間の経過とともに乾燥し縮む性質があります。また、地面は少しずつ沈み込み、地震の揺れも建物に大きな影響を与えます。このような、時間や外の力によって生じる変形や歪みを、あらかじめ設けておいた「逃げ」の部分が吸収してくれるのです。
また、大工仕事はどんなに腕の良い職人でも、わずかな誤差が生じてしまいます。「逃げ」は、こうした施工時の誤差を調整する役割も担っており、緻密な作業を可能にするためにも欠かせません。 「逃げ」を適切に設けることで、建物に無理な力が加わることを防ぎ、ひび割れや歪みといった問題をあらかじめ防ぐことができるのです。
この「逃げ」という考え方は、古くから伝わる日本の木造建築にも深く根付いています。 自然の素材を扱うことで、木の伸縮や乾燥、そして地震の揺れなど、さまざまな変化に対応できる家を建ててきたのです。これは、先人たちの知恵と経験の結晶と言えるでしょう。
現代の建築では、材料や工法は大きく進歩しましたが、「逃げ」の大切さは変わることはありません。むしろ、異常気象による自然災害の増加や、様々な建材が使われるようになった現代においては、「逃げ」の重要性はさらに増していると言えるでしょう。建物がより長く、安全に使い続けられるように、「逃げ」という先人たちの知恵を活かすことが大切です。