栃の木:家具材としての魅力
栃の木は、トチノキ科トチノキ属に分類される落葉広葉樹です。漢字では「栃」もしくは「橡」と書き、西洋では馬栗(うまぐり)の仲間として知られています。街路樹として植えられる西洋栃の木(マロニエ)も近縁種です。
栃の木は、木材として様々な特性を持っています。木目は複雑に入り組み、きめ細やかで滑らかな質感をしています。触れると、その滑らかさに驚くことでしょう。色は、淡い黄色からやや赤みを帯びた褐色まで様々で、使うほどに飴色に変化していく美しさも持ち合わせています。
硬さという点では、他の広葉樹に比べるとやや劣ります。そのため、強度が求められる箇所への使用には向きません。また、湿気に弱く、腐朽菌や虫害にも強いとは言えません。屋外で使用する場合は、防腐処理などの適切な対策が必要です。
しかし、栃の木には大きな魅力があります。それは、板の表面に現れる美しい杢(もく)です。細胞の独特な配列により、さざ波のような模様(リップルマーク)が浮かび上がり、見る者を魅了します。この杢は、家具や工芸品に高級感を与え、高い評価を得ています。
さらに、栃の木はしなやかで曲げやすいという特性も持っています。そのため、曲げ木細工の材料として古くから利用されてきました。複雑な曲線を描く家具や、美しい曲線を持つ日用品など、栃の木のしなやかさを活かした製品は、私たちの生活に彩りを添えています。