なぐり:味わいを深める伝統技法
リフォームを知りたい
先生、「なぐり」ってどういう意味ですか?リフォームの資料で見かけたんですけど、よく分からなくて。
リフォーム研究家
「なぐり」は、木材の表面をちょうなという道具で削って、わざと削り跡を残す仕上げのことだよ。床の間の柱などに使われることが多いね。
リフォームを知りたい
へえ、削り跡を残すんですか? なぜわざわざそんなことをするんですか?
リフォーム研究家
そうすることで、木本来の風合いが引き立ち、見た目にも味わいが出るんだよ。また、表面に凹凸ができることで、光の反射が変わり、陰影が美しく見える効果もあるんだ。
なぐりとは。
「家の改修」と「家づくり」で使われる言葉「なぐり」について説明します。「なぐり」とは、木材の表面をちょうな(斧に似た道具)で削り、削った跡を残す仕上げのことです。床の間の柱などによく見られます。別名「ちょうなめけずり」ともいいます。
なぐりの概要
「なぐり」とは、木材の表面を斧に似た道具である「ちょうな」を用いて仕上げる技法のことです。ちょうなで木材を削ると、独特の削り目が残ります。この削り目をあえて残すことで、滑らかに仕上げるのではなく、木材本来の力強さや風合いを生かした、荒々しくも美しい独特の質感を出すことができます。
この技法は、古くから日本の建築や家具製作に用いられてきた伝統技法です。現代でもその美しさは高く評価されており、特に視覚的に目立つ場所に用いられます。例えば、建物の構造を支える重要な柱である床柱や梁、天井を支える水平材、あるいは室内を彩る調度品などに用いることで、空間に重厚感や格式、そして味わい深さを添えることができます。
滑らかに磨き上げた木材の表面とは異なり、なぐりの仕上げは、職人の手仕事による削り跡が、光と影の陰影を生み出し、空間に奥行きと立体感を与えます。木材の種類によって、削り目の表情も変わり、多様な風合いを楽しむことができます。例えば、木目がはっきりとした木材であれば、その木目をより際立たせる効果があり、重厚な木材であれば、力強さをより強調することができます。
近年では、伝統的な日本家屋だけでなく、現代的な住宅にも「なぐり」の技法が取り入れられるようになってきました。自然素材の温もりと、職人の手仕事による味わい深い質感が、現代の住まいにおいても再評価されていると言えるでしょう。また、和風の空間だけでなく、洋風の空間にも取り入れることで、空間に意外性と個性を加えることもできます。このように、「なぐり」の技法は、時代を超えて愛される、日本の伝統的な技法の一つです。
技法 | 特徴 | 効果 | 用途 |
---|---|---|---|
なぐり | ちょうなで木材を削り、独特の削り目を残す。職人の手仕事による技法。 | 木材本来の力強さや風合いを生かした、荒々しくも美しい独特の質感を出す。光と影の陰影を生み出し、空間に奥行きと立体感を与える。木目を際立たせ、重厚感を強調する。自然素材の温もりと味わい深い質感を与える。空間に意外性と個性を加える。 | 床柱、梁、水平材、調度品など、視覚的に目立つ場所。伝統的な日本家屋、現代的な住宅、和風の空間、洋風の空間。 |
なぐりの種類
木材の表面をちょうなで削る技法、なぐり。その仕上げ方は、ちょうなの使い方一つで千差万別です。力加減や角度、そしてなぐりの種類によって、木材は様々な表情を見せます。大きく分けて「荒なぐり」「中なぐり」「小なぐり」の三種類があり、それぞれ削り目の粗さが異なり、仕上がりの印象も大きく変わります。
まず「荒なぐり」は、大胆にちょうなを振り下ろすことで、深い削り目を生み出します。力強い印象を与え、木材の力強さを引き立てるため、主に家の骨組みとなる構造材などに用いられます。柱や梁といった、建物の基礎となる部分に、この荒々しい表情が力強さを加えるのです。
次に「小なぐり」は、「荒なぐり」とは対照的に、繊細な削り目を特徴としています。ちょうなを細かく動かし、丁寧に削ることで、上品で滑らかな表面に仕上がります。そのため、人の目に触れる機会の多い内装材や、家具などに用いられます。壁板や天井板、そしてテーブルや椅子といった家具に、この繊細な仕上げが美しさを添えます。
最後に「中なぐり」は、「荒なぐり」と「小なぐり」の中間に位置し、用途に応じて使い分けられます。例えば、建物の内外を問わず、様々な場所に用いられることが多い床板などは、この「中なぐり」で仕上げられることが多いです。
さらに、削り目の形状も多種多様です。平行に揃えたり、扇のように広げたり、格子状に組み合わせたりと、職人の工夫次第で様々な表現が可能です。これこそ、職人の経験と技術が生み出す芸術と言えるでしょう。木材の種類や用途、そして空間に合わせて、最適ななぐりの種類と形状を選び、唯一無二の風合いを創り出します。まさに、木材と職人が織りなす芸術作品と言えるでしょう。
なぐりの種類 | 削り目の粗さ | 仕上がり | 用途 |
---|---|---|---|
荒なぐり | 粗い | 力強い印象 | 構造材(柱、梁など) |
小なぐり | 細かい | 上品で滑らか | 内装材、家具(壁板、天井板、テーブル、椅子など) |
中なぐり | 中程度 | 荒なぐりと小なぐりの中間 | 床板など |
なぐりの魅力
「なぐり」仕上げとは、木材の表面をあえて滑らかにせず、独特の凹凸を残す加工方法です。この仕上げの最大の魅力は、木材本来の自然な風合いを最大限に引き出す点にあります。機械で均一に削り出した表面とは異なり、職人の手仕事によって生み出される不規則な削り跡は、見る角度や光の当たり具合によって様々な表情を見せます。まるで木々が風に揺れるように、光と影が織りなす陰影は、空間に奥行きと味わいを添えてくれます。
また、月日が経つにつれて、なぐりの魅力はさらに深まります。削り目の部分は、平らな部分に比べて風雨や紫外線などの影響を受けやすく、色が変化していくためです。時間の経過とともに、味わい深い飴色へと変化していく様は、まさに自然が織りなす芸術と言えるでしょう。新品の家具にはない、独特の風合いは、長い年月をかけて育まれた歴史を物語っています。
さらに、なぐりの魅力は見た目だけにとどまりません。触れた瞬間に感じる、ざらりとした独特の感触は、木の温もりを肌で直接感じさせてくれます。滑らかな表面にはない、この手触りは、私たちに自然との繋がりを思い出させてくれます。視覚と触覚、両方の感覚に訴えかける魅力こそ、なぐりが古くから人々に愛され、現代の住宅でも選ばれ続けている理由と言えるでしょう。まるで森の中にいるかのような、安らぎと温もりを空間に取り入れたいと考えるなら、「なぐり」仕上げは、まさに理想的な選択と言えるでしょう。
特徴 | 詳細 |
---|---|
見た目 |
|
触感 |
|
なぐりを使った空間
「なぐり」仕上げとは、木材の表面を斧などで削り、独特の凹凸をつける技法です。古くから日本の建築で用いられ、特に茶室や和室など、落ち着いた雰囲気の空間で重宝されてきました。柱や梁など、構造材としての役割を担うだけでなく、視覚的なアクセントとしても効果を発揮します。
なぐりの最大の魅力は、素材そのものの持ち味を引き出す点にあります。木肌の凹凸は、見る角度や光の当たり具合によって表情を変え、空間に奥行きと陰影を生み出します。また、職人が一つ一つ手作業で仕上げるため、同じ模様は二つとありません。世界に一つだけの、特別な空間を演出できるのです。
伝統的な和風の空間にはもちろん、近年では現代的な住宅にも取り入れられるようになってきました。例えば、無機質な印象になりがちなコンクリート打ちっぱなしの壁と組み合わせることで、空間に温かみと柔らかさを加えることができます。木材の自然な風合いが、冷たい印象になりやすいコンクリートを和らげ、調和のとれた空間を生み出すのです。また、ミニマルな空間に用いることで、シンプルながらも深みのある、洗練された雰囲気を演出できます。
なぐりは、玄関の上がり框、リビングの壁、階段の手すりなど、様々な場所に使うことができます。玄関に用いれば、訪れる人を温かく迎え入れる雰囲気を作り出せます。リビングの壁に用いれば、落ち着いたくつろぎの空間を演出できます。また、階段の手すりに用いれば、空間に上品さと風格を添えることができます。
このように、なぐり仕上げは、和洋を問わず様々な空間に調和し、空間に深みと味わいを加えることができます。素材の温もりを感じられる、個性豊かな空間づくりに、ぜひ「なぐり」を取り入れてみてはいかがでしょうか。
特徴 | 効果 | 使用場所例 |
---|---|---|
木材の表面を斧などで削り、独特の凹凸をつける技法 |
|
|
伝統的な和風の空間に加え、現代的な住宅にも使用可能 |
|
なぐりの維持と管理
なぐり仕上げの木材は、職人の手仕事によって生み出された独特の風合いが魅力です。表面に凹凸があることで、光の当たり具合によって陰影が生まれ、空間に奥行きと味わいを添えてくれます。しかし、その凹凸ゆえに埃が溜まりやすいという側面も持っています。日頃から柔らかいブラシや乾いた布で優しく埃を払うことで、なぐりの美しさを保ち、清潔に保つことができます。また、掃除機を使用する場合は、ブラシノズルを装着し、木材を傷つけないように注意しながら行うことが大切です。
木材は天然素材のため、湿度や温度の変化に敏感です。特に、乾燥した環境では木材が収縮し、ひび割れが生じる可能性があります。木材の種類によっては、この影響を受けやすいものもありますので、適切な湿度管理を行うことが重要です。加湿器を使用したり、濡れたタオルを室内に干したりするなどして、乾燥を防ぎましょう。逆に、過度な湿気も木材の劣化を招く原因となります。梅雨時期などには、除湿器を使用したり、換気をこまめに行ったりするなどして、湿気がこもらないように注意が必要です。
さらに、木材を保護するために、木材保護塗料を塗布するという方法もあります。木材保護塗料は、木材に塗布することで、防虫効果や防水効果、防カビ効果を高めることができます。塗料の種類も様々ですので、ご自身の住宅の環境や好みに合わせて選ぶと良いでしょう。塗料を塗布する際には、使用上の注意をよく読み、適切な方法で施工することが大切です。定期的に塗料を塗り替えることで、より長く木材の美しさを保つことができます。
このように、なぐり仕上げの木材は、定期的なお手入れと適切な環境管理を行うことで、その独特の風合いを長く楽しむことができるのです。少しの手間をかけることで、愛着も深まり、より豊かな住まいとなるでしょう。
お手入れ方法 | 注意点 |
---|---|
日常の埃除去:柔らかいブラシや乾いた布で優しく埃を払う。掃除機を使用する場合はブラシノズルを装着。 | 凹凸に埃が溜まりやすい。木材を傷つけないように注意。 |
湿度管理:乾燥した環境では加湿器の使用や濡れたタオルを干す。過度な湿気では除湿器の使用や換気をこまめに行う。 | 木材は湿度や温度の変化に敏感で、乾燥するとひび割れ、過度の湿気は劣化の原因となる。 |
木材保護塗料の塗布:防虫、防水、防カビ効果を高める。定期的な塗り替え。 | 使用上の注意をよく読み、適切な方法で施工する。 |