書院造り

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和室

違い棚:和の趣を添える

違い棚とは、日本の伝統的な住まいに見られる、床の間の脇に設けられた飾り棚のことです。床の間は、書院造という格式高い和室の建築様式において中心的な場所であり、違い棚は床の間の一部として、掛け軸や書、花器といった美術品を飾るために用いられます。 違い棚の大きな特徴は、高さが異なる複数の棚板が段々に組み合わされていることです。名前の通り、棚板の高さに「違い」があることで、飾る物の大きさに合わせて置き場所を調整できます。例えば、小さな香炉は低い段に、大きな花瓶は高い段に飾るなど、空間を有効に活用できます。また、この段差は、空間に奥行きとリズム感を与え、視覚的な変化を生み出します。平坦な棚では表現できない、立体的な美しさを演出できることが、違い棚の魅力の一つです。 違い棚は、物を置くための家具というだけでなく、和室の雰囲気を高め、洗練された空間を作る上で重要な役割を果たします。床の間と調和しながら、飾られた美術品を引き立て、静かで落ち着いた空間を演出します。素材には、天然の木材が用いられ、木目や色合いも部屋の雰囲気に合わせることが多いです。古くから受け継がれてきた日本の伝統的な技術と美意識が、この小さな棚に凝縮されていると言えるでしょう。違い棚があることで、四季の移ろいや自然の美しさを室内に取り込み、より豊かな生活空間を創り出すことができます。
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床脇:和室の粋を彩る名脇役

床脇とは、日本の伝統家屋で見られる、床の間の横に設けられた空間のことです。床の間と合わせて、和室の格式を高める大切な役割を担っています。 床の間が主に掛け軸や花瓶などを飾る場所であるのに対し、床脇はより実用性を重視した空間となっています。違い棚や地袋、天袋といった収納家具が備え付けられていることが多く、日常生活で使う様々な道具を収納する場所として使われてきました。 違い棚は、棚板の高さを変えて段々に作った棚のことです。棚の奥行きも場所によって異なり、変化に富んだ美しい見た目となっています。茶道具や置物などを飾るのに使われます。 地袋は、床に接するように作られた引き出しです。文房具や書道用具など、比較的小さな道具を収納するのに便利です。開け閉めしやすいように取っ手が付いており、日常的に使う道具をすぐに取り出せるように工夫されています。 天袋は、地袋の上部に設けられた、天井に近い位置にある収納です。普段あまり使わないものや、季節の飾り物などをしまっておくのに適しています。地袋よりも奥行きが浅くなっていることが多く、見た目にもすっきりとした印象を与えます。 床の間が主役だとすれば、床脇は名脇役と言えるでしょう。床の間を引き立てつつ、和室全体の雰囲気をより格調高く、落ち着いたものにする、大切な役割を担っています。現代の住宅では、床の間と床脇を備えた本格的な和室は少なくなってきましたが、その洗練された美しさや機能性は、今もなお高く評価されています。
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床の間:和室の粋

床の間とは、日本の伝統的な和室に設けられた、格式高い空間のことです。床の間は、単なる飾り棚とは大きく異なり、その部屋の中でも精神的な中心地であり、日本の美意識が凝縮された特別な場所と言えるでしょう。 床の間には、掛軸や生花、置物などが飾られます。これらは、季節感や家の格式、主人の趣味などを表現するために厳選され、調和のとれた美しさを作り出します。床の間の構成要素としては、床板を一段高くした床框(とこがまち)、壁面に設けられた違い棚や付書院などがあり、これらが相まって床の間の格調を高めています。 客人を迎え入れる際には、床の間のある側が上座とされ、もてなしの心を表現する場として用いられます。家の中でも最も格式の高い場所であるため、家屋の顔としての役割も担っていると言えるでしょう。床の間の歴史を紐解くと、室町時代に書院造りが確立されるとともに、床の間も重要な構成要素として定着しました。武家社会においては、床の間は主君の権威や格式を表現する場として発展し、床框の高さや床柱の材質など、細かい部分にまで厳格なルールが定められていました。その後、江戸時代に入ると、武家だけでなく庶民の住まいにも床の間が取り入れられるようになり、広く普及していきました。 現代の住宅においては、和室自体が減少傾向にありますが、床の間は和室の象徴として、あるいは日本の伝統文化を継承するものとして、今も大切に扱われています。現代の生活様式に合わせて簡素化された床の間も見られますが、その空間が持つ独特の雰囲気や美意識は、今もなお人々を魅了し続けています。
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書院造り:日本の伝統的な住まいの様式

書院造りとは、日本の伝統的な住まいの様式の一つで、特に武士の家に多く見られました。現代では床の間のある和室を指す言葉として使われることもありますが、本来は建物全体の構成や様式を表す言葉です。決まった定義はありませんが、一般的には、複数の部屋を襖や障子、壁などで仕切り、それぞれの空間に合わせた天井を張る形式です。 客間は、来客をもてなすための大切な空間です。床の間には掛け軸や花を生け、違い棚には香炉や美術品などを飾り、付書院には書物や文房具を置きました。これらの装飾は、客をもてなす心を形にしたものです。一方、居住空間は、家の主人と家族が生活する私的な空間として、客間とは区別されています。このように、公的な空間と私的な空間がはっきりと分けられていることが、書院造りの大きな特徴です。 書院造りの構造は、主に木材を使った軸組工法です。角柱と貫、桁、長押といった角材を組み合わせることで、建物を支えています。柱と柱の間には壁を設けず、柱や梁などの構造材をそのまま見せる真壁造りも特徴の一つです。また、建具には格子戸や板戸、障子などが使われ、それぞれに繊細な組子細工が施されるなど、洗練された技術と美意識が随所に見られます。書院造りは、日本の風土や文化を反映した、優れた建築様式と言えるでしょう。