数寄屋建築

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和室

落し掛け:床の間の粋な演出

床の間を構成する要素の一つに、落し掛けと呼ばれるものがあります。これは、床の間に設けられた少し低い壁、すなわち小壁の下部に水平に取り付けられる化粧材のことを指します。床の間の正面に位置する小壁は、床の間の格式を高める重要な役割を担っており、その小壁の下端に沿って、水平に設置されるのが落し掛けです。 落し掛けは、一見すると小さな部材ですが、床の間全体の雰囲気を大きく左右する重要な要素です。小壁と床框(とこがまち床の間の畳と板の間の境目にある横木)との間に挟まれるように配置されることで、空間を引き締め、すっきりと洗練された印象を与えます。また、視線を水平方向に誘導する効果もあり、床の間の奥行きを強調し、より広がりを感じさせる効果も期待できます。 落し掛けの素材は、木材をはじめ、竹や金属など様々です。木材の場合、床柱や床框と同じ木材を用いることが多く、統一感のある落ち着いた雰囲気を演出します。一方、竹や金属を用いる場合は、素材特有の質感が空間にアクセントを加え、モダンな印象を与えるでしょう。形状も様々で、シンプルな直線的なものから、曲線や装飾が施されたものまで、多様なデザインが存在します。 このように、落し掛けは、その材質や形状によって様々な表情を見せ、床の間の装飾性を高める上で欠かせない存在です。小さな部材ながらも、空間全体の雰囲気を左右する力を持つ落し掛けは、日本の伝統的な建築様式における繊細な美意識を象徴するもののひとつと言えるでしょう。
工法

数寄屋建築の魅力:日本の伝統美

数寄屋建築は、安土桃山時代から江戸時代にかけて大成された、日本の伝統的な建築様式です。「数寄」とは、風流で粋なことを好み、独自の美意識を持つことを意味し、その名の通り、こだわり抜かれた美意識が随所に散りばめられています。 その起源は、千利休が完成させた侘び茶の思想に基づく茶室建築にあります。それまでの格式ばった書院造とは異なり、簡素で質素ながらも洗練された美しさを追求しました。小さな空間の中に、自然の素材と光を巧みに取り込み、静寂と落ち着きを演出する空間構成は、まさに芸術作品と言えるでしょう。 数寄屋建築の特徴は、自然素材の活用です。木、竹、土、紙といった自然の恵みをふんだんに用い、素材そのものの持ち味を活かすことで、温かみのある空間を作り出します。柱や梁には、磨きすぎない荒木を用いたり、壁には土壁や塗り壁を用いたりすることで、自然の風合いを大切にした、落ち着いた雰囲気を醸し出します。また、障子や襖といった建具も重要な要素で、柔らかな光を取り込み、空間を優しく仕切ります。 簡素な意匠の中に光と影の演出を巧みに取り入れることも、数寄屋建築の魅力です。障子から差し込む柔らかな光は、壁に美しい陰影を作り出し、時間の流れとともに変化する表情を見せてくれます。また、低い軒と深い庇は、夏の強い日差しを遮り、冬は暖かい光を取り込むという、日本の気候風土に適した機能性も兼ね備えています。 現代の住宅においても、数寄屋建築の要素を取り入れる例は多く見られます。自然素材を活かした空間作りや、光と影の演出、洗練された簡素美は、現代の生活にも通じるものがあり、時代を超えて愛される日本の美意識を体現していると言えるでしょう。