モルタル刷毛引:温もりある壁の表情
刷毛引き仕上げは、モルタル壁の仕上げ方法の一つです。モルタルとは、セメントに砂と水を混ぜ合わせた建築材料で、壁や床などに広く使われています。このモルタルを壁に塗った後、完全に乾き切る前に刷毛を使って表面に模様を付けるのが、刷毛引き仕上げです。
乾きかけのモルタルに刷毛を滑らせると、刷毛の毛の跡が残り、独特の模様が生まれます。模様の種類は様々で、平行な線を描いたり、扇形に広がる模様を作ったり、職人の腕次第で様々な表情を生み出すことができます。機械では出すことのできない、手仕事ならではの温かみのある仕上がりが特徴です。
刷毛引き仕上げは、コンクリート打ち放しの壁とは異なる雰囲気を持っています。コンクリート打ち放しは近代的な、冷たい印象を与えますが、刷毛引き仕上げは柔らかく、落ち着いた雰囲気を空間に与えます。そのため、住宅の外壁だけでなく、内壁にも使われることが増えています。
仕上がりの風合いは、使う刷毛の種類や、刷毛の動かし方によって大きく変わります。硬い刷毛を使うと力強い模様になり、柔らかい刷毛を使うと繊細な模様になります。また、刷毛を動かす速度や角度によっても模様は変化します。そのため、職人の経験や技術、美的感覚が仕上がりの質を大きく左右すると言えるでしょう。
かつては和風建築で使われることが多かった刷毛引き仕上げですが、近年では洋風建築や現代的なデザインの建物にも取り入れられるなど、その活躍の場は広がりを見せています。様々な素材や色と組み合わせることで、より個性的な空間を演出することが可能です。