左官職人の必需品:鏝板
壁や床を塗る左官職人にとって、鏝板はなくてはならない道具です。塗る材料をのせておく板のことで、大きさはおよそ30センチメートル四方です。持ち運びしやすいように柄が付いているのが特徴です。この板は「鷹」とも呼ばれています。ちょうど鷹が獲物を掴んでいる様子に似ていることから、この名前が付けられました。西洋では、鷹匠が鷹狩りで使っていた盾を転用したのが始まりという話もあります。
鏝板の使い道は、塗る材料を乗せておくだけではありません。左官職人は、この鏝板の上で材料を混ぜ合わせ、ちょうど良い具合の硬さに調整します。コテを使って壁や床に塗る際にも、鏝板の上に材料を少しずつ取りながら作業を進めます。つまり、鏝板は材料を保管しておく場所であると同時に、作業場としての役割も担っていると言えるでしょう。
鏝板の材質は、一般的には木製です。塗料を混ぜたり、コテで材料を削り取ったりする際に、金属製の板だと傷が付いたり音がうるさかったりするからです。また、木の板は適度な重さがあり、安定して材料を混ぜることができます。最近では、軽量で扱いやすい樹脂製の鏝板も登場しています。しかし、木の板は長年の使用に耐える丈夫さがあり、使い込むほどに手に馴染むという利点もあります。
このように、鏝板は左官職人にとって単なる道具ではなく、まるで相棒のような存在です。熟練した職人は、鏝板の使い方一つで仕上がりの美しさを大きく変えることができます。鏝板を自在に操り、壁や床に模様を付ける職人技は、まさに芸術と言えるでしょう。鏝板は、日本の伝統的な左官技術を支える、大切な道具の一つなのです。