家づくりに潜む吉凶?唐尺の秘密
唐尺とは、日本の伝統的な建築で用いられてきた、長さの単位である尺貫法の一種です。建物を建てる際、柱と柱の間隔や、建物の高さといった寸法を決めるのに使われてきました。「唐」という名前から分かる通り、中国から伝わったものと考えられています。大工道具としておなじみの曲尺(かねじゃく)をご覧になったことがあるでしょうか。曲尺には表と裏があり、それぞれに目盛りが刻まれています。表側の目盛りは物の長さを測るのに用いますが、裏側に刻まれているのが唐尺です。
唐尺は、単なる長さの単位とは異なり、吉凶を判断するための特別な意味を持っています。家造りにおいては、昔から柱の間隔や高さを決める際に、この唐尺を用いて縁起の良い寸法を探し、災いを避けるという知恵が伝えられてきました。それぞれの目盛りには、「財」「病」「離」「劫」「官」といった意味が込められており、家を建てるにあたって、財運に恵まれるように「財」の寸法を積極的に用いたり、病気になるのを避けるために「病」の寸法を避けるといった工夫が凝らされていました。家の間取りだけでなく、家具の寸法にも唐尺が使われることがありました。
現代ではメートル法が主流となり、唐尺を知る人も少なくなってきましたが、かつては大工の棟梁にとって必須の知識でした。唐尺を用いることで、施主の願いを叶え、末永く幸せに暮らせる家を作ることができたのです。日本の建築文化史において、唐尺は古来より受け継がれてきた重要な要素の一つであり、現代の建築にもその影響は少なからず残っています。昔の建物を訪れる機会があれば、柱の間隔などに注目してみると、先人たちの知恵と工夫を垣間見ることが出来るかもしれません。