サムラッチ錠:懐かしさと高級感の融合
押し棒式の握り玉錠、それがサムラッチ錠です。扉の開け閉めに用いるこの錠前は、親指で上下に動かす縦長の棒が目印です。この棒、正式には「サムターン」と呼ばれ、これを押し下げたり引き上げたりすることで、扉の中に仕込まれたかんぬきを動かし、鍵の開け閉めを行います。
くるりと回す握り玉や、上下に動かすレバー式の握り玉とは全く異なる操作方法と、どこか懐かしい見た目がサムラッチ錠の特徴です。最近ではあまり見かけなくなりましたが、一昔前の家では玄関扉によく使われていました。そのため、この錠前を見ると、昔の家のことを思い出す人も少なくないでしょう。
サムラッチ錠の魅力は、現代の錠前にはない独特の雰囲気にあります。握り玉錠のように回す動作も、レバー錠のように押し下げる動作も必要なく、親指でサムターンを上下させる独特の操作方法は、他の錠前にはない趣を感じさせます。
さらに、装飾性もサムラッチ錠の大きな魅力です。サムターン部分や錠前を取り付ける枠部分には、様々な模様や彫刻が施されていることが多く、家の外観にアクセントを加えてくれます。シンプルなものから、植物や幾何学模様など手の込んだものまで、様々なデザインがあります。こうした装飾は、住む人の好みに合わせて選ぶことができ、家の個性を表現する手段の一つとして楽しまれていました。
防犯性の面では最新の錠前に劣る部分もありますが、その独特の形状と操作感、そして装飾性は、今でも多くの人々を惹きつけています。古民家やレトロな雰囲気の家を好む人にとっては、サムラッチ錠はまさにうってつけと言えるでしょう。