琵琶床:和室の格調を高める粋な空間
琵琶床とは、日本の伝統家屋である和室に設けられた、床の間の中でも特に格式が高いものです。床の間は、客をもてなす場として、掛け軸や花入れ、置物などを飾り、和室の中で最も重要な場所とされています。
琵琶床の特徴は、床框と呼ばれる床の間の縁より一段高く作られた段板にあります。この段板に琵琶を立てかけておくことから、琵琶床と呼ばれるようになりました。琵琶以外にも、香炉や花瓶などの貴重な品々を飾る台としても使われました。この段板があることで、床の間全体に奥行きが生まれ、立体感が強調されます。その結果、床の間がより格式高く、荘厳な雰囲気となるのです。
琵琶床は、「達磨床」や「鎧床」といった別名でも知られています。達磨床という名は、禅宗の開祖である達磨大師が座禅を組む姿に似ていることに由来します。また、鎧床という名は、武士が鎧兜を飾るのにふさわしい形状であったことに由来します。これらの別名からも分かるように、琵琶床は単なる飾り棚ではなく、精神性や武家の伝統と深く結びついた、特別な意味を持つ空間であったことが窺えます。
現代の住宅では和室自体が少なくなり、床の間を設けることも少なくなってきました。しかし琵琶床は、日本の伝統的な建築様式や美意識を今に伝える、貴重な文化遺産と言えるでしょう。